春を呼ぶドッペル事件?
「……?」
想像した痛みがいつまでも来ず、少女は恐る恐る顔を上げる。
「大丈夫だった!?……って」
「「あっ!?」」
こうしてついに、同姓同名そっくりな2人が顔を合わせることになったのだった。
――翌日。
「まさか『リュウカのそっくりさん』とはな……通りでリュウカの分身の中にいないわけだ」
「は、はい……」
ローロリオの部屋に赤と青、二人のリュウカがソファーに座っていた。
「『この世界の私』、とも言えるかもね。私自身は異世界からここに来たわけだし」
「そうなんだ……でも、なんで私の居場所がわかったの?」
「え?そりゃあほら……」
少女の問いに、リュウカはにっと笑いながら自分の頭を指さす。
首を傾げる少女に、ローロリオが付け足した。
「君は頭に花冠を付けているだろう。『走った後に花びらが落ちていた』という情報が多かったからな、それを辿らせてもらったんだ。花びらは風ですぐ飛んでしまうが、最近のものなら比較的残っているものだ。特に、花の少ない森の中まで続いていれば目立つものだ」
少女は自分の頭を触る。いつからかずっと付けている、いつまでも枯れることのない花冠。
これが目印になるとは思わなかったな、と少女は独り言ちた。
「それで、君はこれからどうするの?」
「え、えっと……その……」
青髪のリュウカに問いかけられ、赤髪の少女は俯く。
「わ、私……街の皆さんにすごく迷惑かけちゃったかなって思って……それにその、リュウカさんとローロリオさんにも私を探してもらっちゃって……私、この街にいてもいいのかなって……」
少女は震えていた。あんなに騒がせてしまったのだ、嫌われてたらどうしよう、と悪いことばかりが頭によぎっていた。
が、そんな思考のループをリュウカが断ち切った。
「大丈夫だよ」
「……へ?」
「皆、そこまで悪いことされたって思ってないよ。不思議なことが起きるのはよくあることだし、それにこの街は動物に精霊、神様だって住んでるんだもの。私とそっくりな君がいてもおかしくないよ!だから、大丈夫!」
少女を元気づけるように、明るく話すリュウカ。
そんな彼女を見て、少女は少し気持ちが軽くなった。
「……そう、かな。そうだといいな」
「うんうん、きっと大丈夫だよ!ね、ローロリオ!」
「まぁ、間違ってはいないな。さて、二人に一つ相談がある」
ローロリオが、二人に声をかける。