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春を呼ぶドッペル事件?

ある日の夜。すっかり暗くなったポルカーナに、一人の少女が走ってくる。
涙目で時々後ろを振り返りながら走る様子から、どうやら逃げてきたようだ。

(も……もう来てない……?)

いったん立ち止まり、乱れた呼吸を整える。
この世界では、暗くなるとゾンビやスケルトンなどのモンスターが湧く。街灯のあるこの街であればその脅威からは逃れられるが、それでも彼女の心は休まらなかった。

(ここは街……?ここなら魔物は来ないかな。でも……ここがバレたらどうしよう、隠れないと……!)

街中を走り回った後、彼女はひとまず教会の裏――墓地に隠れることにした。

そして朝。

「うう……よく眠れなかった……」

不安な夜を過ごしたものの、少女はひとまず難を逃れることができた。 が、そんな彼女にさらなる困難が降りかかる。
背後に忍び寄る、何かの気配。

「ばぁ!」

「やああああああああ!?!?」

背後から幽霊のアイリスに驚かされ、振り返る間もなく少女は墓場を飛び出した。
イタズラが成功し、クスクス、と笑うアイリス。しかしふと違和感に気づいて首を傾げた。

(リュウカちゃんって、あそこまで派手に驚く子だったかな……?)


 

バタバタと教会の敷地を飛び出し、ハート池の傍で立ち止まる。

「び、びっくりした……」

ハァハァ、と息を切らす少女。そこに、通りがかった2人――乙女とメルが声をかけた。

「あれ、リュウカちゃんだよね?おはよう!花冠可愛いね!」

「おはようリュウカちゃん、もしかして髪の色変えた?」

 「……え!?」

なんで私の名前を知ってるの――!?

そう、少女の名前はリュウカ。色こそ違うが、特徴的な傷も含めて外見はほとんどそっくりな上、名前も一緒なのだ。
まさかこの街、ポルカーナに同姓同名の少女が先に来ているとは全く知らない彼女は、あっという間にパニックに陥ってしまった。

「わ、え、あ、あ、ごめんなさいーー!!」

「え!?ちょっと、リュウカちゃん!?」

すっかり混乱してしまった“赤い”リュウカは、止める間もなく再びどこかへ走りだしてしまった。
そんなところへ――

「何か騒いでたけど、どうしたの?」

あの“青い”リュウカがやってきたのだった。

 ――しばらくして。

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