雨の日の茶話会
晴天の多いポルカーナに珍しくさあさあと雨が降り出したある日のこと、ルドー教会の墓地で1人溜め息を漏らす幽霊がいた。
『雨かぁ…嫌いじゃないけど、雨だと誰もこないんだよねえー』
幽霊のアイリス、生前は病弱であまり表に出られない子であった。 幽霊となった今ではおちゃめなイタズラを繰り返している、そんな彼女にはイタズラ仲間がいた。
『……そうだ、ルインちゃんのとこ行こっ!』
魔法使いでありエルフのクオーター、ルイン。
白い彼女は大人しそうな外見とは裏腹にアクティブで、イタズラ好きなところがアイリスと相性がよかった。
ルドー教会の小道を抜けて、ガゼボの並ぶ庭へ、いつもの場所にルインはいた。
『ルインちゃん!遊びに来たよー!』
「いらっしゃいアイリスちゃん、今お茶を淹れてあげるわ」
『ほえ?私幽霊だからお茶出されても飲めないよー?』
「ふふふ、幽霊でも飲めるお茶を作ったのよ」
『わあ!ありがとう!でもどうやって作ったの?』
「砕いて粉にしたエンダーアイを煎じたネザーウォートに入れて、2種類のキノコを刻んで入れてブレイズロッドで魔法を唱えながら混ぜるの、最後にこして出来上がり。材料は不味そうだけど美味しいのよ?」
そう笑いながら、彼女は綺麗なティーカップに2人分のお茶を注いだ。
白いガゼボの下で、2人だけの茶話会の始まり。
女2人でもかしましい、賑やかな茶話会だ。
『ねえねえルインちゃん、ルインちゃんには好きな人はいないの?』
「いないわね、だってみーんな私より先にいっちゃうんだもの」
『幽霊になって出てきてくれるかもよ?』
「幽霊になれるのは未練があるやつだけよ、殆ど成仏して次の人生歩み始めるんだから」
『私はまだまだ成仏しないからねー』
「あら、それならまだまだ一緒にイタズラ出来るわね」
内容は乙女から離れつつあるが、2人もなんだかんだ言いたいこと、聞きたいことがあった。
「ねえアイリスちゃん、あなたは今幸せ?」
『もっちろん!たまにみっちゃんが会いに来てくれて、ルインちゃんとイタズラも出来る!幸せだよ!』
「ふふ、それは嬉しいわ」
『ルインちゃんは忘れられない人っているの?』
「いるわよ?ずっとずっと、ずーっと昔、結婚してほしいってプロポーズしてきた人間がいたの。断ったけどしつこかったわー」
『どうしてその人が忘れられないの?』
「……なんででしょうねぇ?」
『あー!はぐらかすの禁止!』
「ふふ、子供には教えてあげられないわ」
わいわい、きゃあきゃあ。
かしましイタズラコンビの茶話会は終わらない。
…雨音に溶けるように呟いた、
「129年前に死んだのに忘れられないの」
という言葉は、はたして誰が聞いただろうか。