双子ちゃんのとっかえっこ
海底深いレストラン、そこには名物ウエイトレスの双子がいた。
「ねえねえフィーちゃん」
「なあにリューちゃん」
姉のフィリィと妹のリュリィ、見分けがつかない程顔はよく似ている。
だが性格はてんでバラバラだ。
姉のフィリィはしっかり者、妹のリュリィはおっちょこちょい。
ヘアピンの位置を変えることで見分けやすくしていた…のだが。
「今日はフィーちゃんがヘアピンこっちにしない?」
「お?とっかえっこ?いいよー」
…時々、こうして入れ替わってしまうのだ。
ヘアピンの位置だけではない、行動、言動、全てを入れ替えて互いが互いになりきる遊び。
誰かに見分けられるまで、お互いになりきる。
そういう遊びを時折始めるのだ。
早速ルーファスさんが目に付いた、2人で顔を見合わせてから飛びつく。
「「おじじー!」」
突然双子から抱きつかれてもロマンスグレーの紳士は動じない、いつも通りの笑い声と共に彼女らを受け入れた。
「ふぉっふぉっふぉっ、フィリィもリュリィも元気ですなぁ」
「そうだよ、フィリィは元気だよ!」
「リュリィも!」
「…今日はとりかえっこの日なのですかな?」
あっという間に見抜かれた。
亀の甲よりなんとやら、2人は顔を見合わせて笑った。
「さっすがおじじ、わかっちゃったかー」
「どーしてわかったのおじじ?」
「簡単ですよ、いつも見ておりますから」
いつも一緒に働いているから見分けがつくのだと、仲間だからわかるのだという嬉しい言葉。
見抜かれたからには仕方ない、双子はヘアピンをいつもの位置につけ直した。
「あのねおじじ、私たちおじじが大好きよ!」
「うん!だーいすき!」
「ふぉっふぉっふぉっ、それは嬉しいですなぁ」
賑やかな海底、揺らめくイカと泳ぐ魚達。
そんな海の仲間に見守られながら海底レストランは続く。
お客様がいる限り、舞台がある限り、従業員がいる限り。
「ねえねえフィーちゃん」
「なあにリューちゃん」
並んで掃除をする双子は、また楽しく会話をする。
「今度はおじじ以外の人にも試してみない?」
「さんせー!」
…双子のとりかえっこ遊びはまだまだ続く。