雪国兄弟の休暇
それは突然嵐のようにやってきた。
「トミー!オミ兄ちゃんがきーたぞー!」
「……オミ兄、ここどこだかわかってんの?」
「お前の勤務先!」 「わかってんなら遊びに来る感覚でこないでよ!」
「せっかくお兄ちゃんがきたのに冷たいなートミーは」
全く、お気楽なものだ。
こっちはまだ仕事があるというのに自分は休暇だからと押しかけてくるなんて。
…まあ、顔を見せてくれるのは嫌じゃないけども。
「お前の兄さん元気だな…」
「オマリーさん、お騒がせして本当にすみません…すぐ追い出しますんで」
「おいおいおーい!愛しの兄ちゃん追い出すとはどーゆーこと!?」
「ここは遊び場じゃないんだってば!」
相変わらずの兄弟コント、思えば昔からこんな感じだった。
オミ兄が絡んできてボケて、僕がツッコミ役。
こんなやり取りも久々すぎて最早懐かしさすら感じる。
「まあまあ、ユキトミは今から休憩行ってこいよ。ついでにお兄さんに街でも案内してやれ」
「まあ、オマリーさんがそう言うなら…」
「上司には素直なのお兄ちゃん悲しい…」
とりあえず戯れ言はスルーして、兄の手を引いて交番を出た。
まだまだ発展途上とはいえ、ポルカーナは案内するところが多すぎる。
段々になった小麦畑、八百屋やパン屋が並ぶ商店街、マンション近くの見晴台にお気に入りの喫茶店、あとハート池にある小さな露店も。
オミ兄もオミ兄で、あれはなんだこれはなんだと落ち着きがない。
ある程度案内はしたので、ラビィちゃんのたこ焼きを買って小休止。
「いやー、ポルカーナっていいな!見どころありすぎて退屈しないし!」
「それは同意するよ、ほら、ラビィちゃんのたこ焼きも美味しいよ」
「いっただっきまーす!…あっふい!」
「熱いに決まってるじゃん…焼きたてなんだからさ」
「はふ、ほふ……んぐ、うまい!」
「はいはい、よかったね」
警察官になって、ポルカーナに赴任が決まった時は想像もしていなかった。
まさかオミ兄がくるなんて、まさかこうして並んで歩けるなんて。
正直なところ、嬉しかった。
僕はオミ兄が好きだし、オミ兄も故郷から出られたし。
コントみたいなやり取りも嫌いじゃない、って言ってやりたいけど調子に乗るからやめておく。
「なあトミー」
「なあに、オミ兄?」
「兄ちゃんはな、ポルカーナにこれて幸せだぞ」
「…そっか」
たまになら職場への突撃も許してやろう。
そう思えた昼下がりだった。