ちぐさの独り言
こんにちは、ちぐさです。
こう見えても植物を司る精霊王です、まだ新米ですけども。
植物の多い場所を、とフラフラしていたらポルカーナにたどり着きました。
畑は活力に溢れて力も安定しやすいので、よく畑にいます。
人見知りではないですが、お喋りは苦手な方です。
どう話したら嫌われないかとか、不愉快にさせないかとか、考えると言葉が出なくなってしまいます。
私の他にも王様や神様がいらっしゃるので、親交を深めてみたいとは思うのですが、いかんせん口下手と新米王、新入りという足枷が邪魔をして交流に踏み出せずにいます。
このままではいけない、とは思うものの、勇気が出ません。
ですので、まずは自然に話す事からと思い、畑の野菜達に話しかけています。
傍から見ると完全に独り言ですが、畑の野菜達には、それぞれ精霊がついています。
その精霊達と会話をして練習しているのです。
「こ、こんにちは」
『ちぐさ様こんにちは!』
『今日もいいお天気ですよー』 『風も強くないから倒れる心配もありませんね』
…練習、なのですが、毎回精霊達の勢いに圧倒されて聞き役に周りがちです。
でも、少しずつではありますが、会話は慣れてきました。
「今日みたいな日は日向ぼっこが気持ちいいでしょうね」『わかりますー!』『ここ、日当たりいいから好きですよぉ』
『作ってくれたみっちゃんには感謝なのです!』
みっちゃん、そう、みっちゃんです。
フラフラやって来た私を何の疑いもなしに受け入れてくれました。
きっと彼女は女神か、女神の生まれ変わりなのです、同意してくれる人はいるはずです。
そう言えば、みっちゃんに
「受け入れてくれてありがとう」
と言えていません。
私とした事が礼節を欠くだなんて。
「…今からみっちゃんにありがとうを伝えたら、戸惑われるでしょうか?」
『ちぐさ様、気にしすぎでは?』
『そうそう、きちんと伝えればわかってもらえますよ』
『ついでにボク達に畑をありがとうって伝えてほしいですっ!』
ああ、そうです。
この畑がなかったら、こんな風に会話の練習も出来ませんでした。
みっちゃんには感謝してもし足りないくらいですね…
「わかりました、今度お会いできたら伝えます」
『やったー!』 『ちぐさ様ありがとうございますっ!』
『ちぐさ様バンザーイ!』
…ここは様々な人種、どころか精霊や妖精、神様まで暮らす街。
私は新顔で、新米で、口下手ですが。きっと、うまくやっていけるはずです。
…後日、みっちゃんにお礼を言いに行って盛大に噛んだのは忘れ去りたい記憶となりました。
まだまだ会話、練習が必要です…