多可ウルチ君とお米さん
ーーーーウィーンガッコンガッコンーーーー
ーーヴぁー、ヴぁばー…ーーー
ーーーコケーッコッコッコッコ…ブシューじゅーじゅー…ーーー
「はぁ…」
「いやーどうもどうもウルチ君、急に呼び出してごめんねー。」
「あ、《スティーブ》さん。自動畑工場と半自動焼き鳥製造機の修理、ゾンビトラップタワーの微調整、全て終わりました。」
「いつもすぐなおしてくれて助かるよ、本当にありがとう。」
「こちらこそありがとうございます。 今回の明細になります、まずこちらがー…」
僕の仕事は、別に僕じゃなくてもいい。
同僚も先輩も後輩にだって、優秀な人はたくさんいる。
赤石やグロウストーンの粉まみれになったゴム手袋とマスクを外す。
ふりかえって見上げた《それら》は、ただただ四角くて冷たい。
大量生産された金属とガラスをふんだんに使って造られた、天高くそびえるトラップタワー。
巨大な牧場と、隣接する巨大な食肉加工工場。
生産量を重視した機能性抜群の野菜工場たちは、広大な緑をたたえているのに硬くて寒そうに見える。
「……癒しがほしい…可愛いが、足りない…」
ここは、寒いよ…
『米っ!』
「え?」
『コーメッ米!』 スケッチブックベシベシ
「なにこれ、米粒のぬいぐるみ…が、動いてる?」
『米米っ。』
スケブ【ポルカーナっていう街に、かわいいTTがあるよ!】
【写メ見せてあげる!】
「え、なにこれ、どういう状況… わ、凄い!大樹の中のトラップタワー!?ああっこっちは海中に建物が…え、海底神殿を海中レストランに大改造!!?しかもイケス付きって…ああっね、ネザーゲート?!な、なんだここ、凄い!カッコいい、あ、街中可愛い!商店街すてきじゃん!」
『米っ?』【一緒に来る?】
「いぃぃいい行きます!連れてって!お米の妖精さん!」
次の日。
引き継ぎ作業は毎回細かくやってたから特に必要なく、すぐさま辞表を係長に押し付けて。
愛用の工具とバックパック背負って。
新しい【社長】へ渡す履歴書を大事に持って。
お米さんはナップザックに乗っかってもらって道案内をしてもらってーーー
ーーー現在。
「ふんふんふーん♪」
『米っ。』
迷コンビは今日ものんびり【社長】のご依頼をお待ちしております!
「あ、社長!おはようございまーす!」
『米~!』【みっちゃん、おはよー。】
山水木。「おはようございまーす…(社長って呼ぶの、いいかげんやめてくれるかなぁ…無理かなー…)」