うさちゃん先生と道徳
初等部の教室、少しだけ聞こえる話し声をパンパン!と手を鳴らして制止させる。さあ、授業の始まりだ。
「はーい!良い子のみんなー!今から道徳の授業を始めるぞー!」
「「「はーい!!!」」」
うさちゃん先生ことユキオミ先生、子供達の間では白い髪に赤い瞳がウサギのようだとあだ名で呼ばれている。
教師としては名前で呼ぶように諌めるべきなのだろうが、本人は気にしてはいない。
「じゃー出席番号1番から順番に、教科書の26ページのところを段落まで音読してってー」
「はーい!」
今は道徳の授業の時間、教師ユキオミが1番力を入れる授業である。 ユキオミは迫害を受けていた過去を持つ、幸いにも両親は周囲から庇ってくれていたが、心無い言葉は幼い心に容赦なく突き刺さっていった。
だからこそ、この授業は1番大切だと考えている。
迫害なんてするだけ無意味で、時間の無駄で、虚しいだけだと。
多くの子供達に伝えたいのだ。
…音読が終わると、先生として話をしなくてはいけない。
今音読したこの話から何を感じ取れたのか、何を思ったのかと。
「読んでみてどうだったかな?」
「うさちゃん先生、どうしてこの話の子は見た目が違うだけで変って言われたの?」
「ね、おかしいよね?普通の子とそんなに変わんなかったのに」
少し、自分と重ねてしまう。
ふるり、と頭を軽く振って笑顔を作る。
「人間ってのはね、自分と違うものを見た時に変だなって、自分と違うなって考えるんだ。だから変って言われたんだろうね。…でもいいかい?どんな見た目でも、どんな中身でも、話が出来るなら人と人、いや人じゃない相手とも分かり合えるんだ。言葉が通じなくても心が通じ合えることだってあるんだよ」
教師らしく講釈を垂れたが、要は分かり合おうとする気持ちが大事なのだ。
前途ある若者達にはまだ難しい言葉かもしれないが、きちんと話をしておかなくてはいけない。
「先生の住んでた村は雪国でね、白い髪は不吉だって散々言われたんだ。勿論いじめられたりもね。…だから、みんなはどんな子が相手でも、そんな言葉を言う子にはなってほしくないんだよ」
「…うさちゃん先生が珍しく真面目だ!」
「こらこら、先生はいつだって真面目でイケメンだろー?」
どっと笑いが巻き起こる。
わざと笑わせにいったけど、この子達はわかっている。大丈夫。
ここはなんて言ってもポルカーナ、犬猫なんて可愛いもので、喋るクマやカッパ、果ては精霊や神の類いまでいる街だ。
そんな街で「変」なんてものは、よっぽどのことがない限り言われないだろう。
キーンコーンカーンコーン…
授業の終わりのチャイムが鳴った。
「じゃあ明日までに感想文を書いておくこと!宿題な!」
「「「えー!」」」
「えー、じゃないの。やっておくこと!」
「…はーい」
唐突な宿題にはげんなりされてしまったが、ユキオミは感想文を楽しみにしていた。
…翌日、生徒達から提出された感想文は、彼の望む答えが並んでいた。